リッツお菓子研修記

1995年9月4日(月)

7:00 リッツにてオリエンテーション/食事、8:00〜12:30 菓子研修

早朝まだ暗い中、リッツへ向かう女6人。寒さに震えている。ゴディバの角を曲がり、サントノーレ通りを少し行き、シャネルやセリーヌのあるカンボン通りを入ると、右手にリッツの従業員用の裏口がある。地下に降りてしばらく行くと、リッツ・エスコフィエ、研修の場である。まずは、パンとコーヒーの朝食をとりながら、レシピを受け取って、研修のオリエンテーション。リッツのクロワッサンは最高。この旅一番の感動だったかも。パン・オ・レザンは生地よりレーズンの方が多い位。ブリオッシュもおいしくて。この3つを食べてしまったら、昼食は無理といわれながら、3つしっかり制覇。それから、ユニフォームを借りるために、洗濯室に。客室のシーツやバスローブも、ここでクリーニング。帽子をかぶり、エプロンをすると、気分は名シェフ。中身はこれからだ。この日の研修は、

<パリ・ブレストParis Brest/パッションフルーツのムースMousse aux Fruits de la Passion>
@パート・フイユテ(折り込みパイ生地)
ふるった小麦粉を作業台の上に盛る。室温で柔らかくしたバターを加えて粗く混ぜ(サブレ)、こんもり盛り上げて中央をくぼめ、泉の形(フォンテーヌ)にする。くぼみに塩と水を入れ、混ぜる。その水を少しづつ小麦粉に混ぜていく。丸くまとめて、上にナイフで十文字に切り込みを入れ、ビニール袋に入れて冷蔵庫に入れる。

Aパータ・シュー(シュー生地)
鍋に牛乳、塩、水、バターを入れ火にかける。煮立ったら火からおろして、小麦粉をふるい入れ、木べらで生地が鍋から離れるまで混ぜる。卵の半量を入れぐるぐると混ぜる。残りの半量を加え混ぜ、さらに残りを加える。固さは人差し指でとって持ち上げた時、先がおじぎする状態がよい。天板に粉をふり、18cmの型で2つあとをつけ、絞り出し袋(14号の丸口金)でリング状に絞る。その内側にもう1本、上に重ねて3本目を絞る。もう1つは18cmの1cm内側に1本絞る。3重の方はセルクルにバターを塗ってコルセットにし、アーモンドスライスをかける。オーブンは250℃に予熱しておき、200℃に下げて25〜30分焼く。空気弁は開けておく。

Bクレーム・パティシエール
鍋に牛乳と砂糖の半分、バニラ棒を入れて沸騰させる。ボールに卵黄と残りの砂糖を入れ、ホイッパーでかき混ぜる。ふるったコーンスターチを加えてよく混ぜる(小麦粉だとねっとりする)。これを混ぜながら、沸騰した牛乳の一部を加え溶きのばし、鍋に戻し入れ火にかける。ぶくぶくいってきたら火からおろし、バターを入れ混ぜる。天板にラップをしき、その上に広げてラップし冷蔵庫で冷やす。

Cパート・フイユテの折り込み
作業台に粉をふり、バターをめん棒でたたいて柔らかくし、15x15cm位に伸ばす。生地をバターの2倍の長さに伸ばし、バターを両側から包み込む(1〜2cm重ねる)。生地を伸ばし3つ折りする。1/4回転させてもう一度3つ折りする。ビニール袋に入れて休ませる。

Cビスキュイ
卵白を泡立て、側面に泡がつくようになったら砂糖を加える。卵黄を入れてさっと混ぜる。小麦粉をふるい入れ、ゴムベラで混ぜる。生地を絞り出し袋に入れ、天板に紙を敷いて、10mmの口金で18cmの円盤1つと、幅4cmの帯状に絞り出す(表面をならす)。緑のナパージュで模様を書く。220〜230℃のオーブンで10分位焼く。

Dパリ・ブレストのクリーム 仕上げ
ボールにプラリネペーストとバターを入れホイッパーでクリーム状になるまでよく混ぜる。室温に戻したクレーム・パティシエールを加え混ぜる。絞り出し袋(星形の口金)に入れる。ラム酒を加えたシロップ(シロップ5:ラム酒1)に焼き上がった1本のリングを浸す。3重の方を横2つに切りクリームを2重に絞る。1本のリングをのせ、クリームを上からおとすように外から内へ斜めに絞る。上にも絞る。ふたに粉糖をかけてのせる。

Eパッションフルーツのムース
ビスキュイをセルクルより低めに切り、表面に油をふきつけて敷き込む。イタリアンメレンゲを作る。鍋に砂糖と水少量を入れ火にかけ、プティ・ブーレ(117℃)までシロップを煮詰める。その間に、卵白を固く泡立てる。卵白を混ぜながら、ゆっくりとシロップを加える。引き続きかき混ぜてメレンゲがなめらかになったら出来上がり。パッションフルーツのピュレ、砂糖、ジュレ・デセール(凝固剤)をホイッパーで混ぜ、40℃に温める。冷ましてイタリアン・メレンゲを加えさっくり合わせる。泡立てた生クリームを合わせる。ビスキュイにシロップとパッションフルーツのピュレを混ぜたものをうち、ムースを入れる。

Fクレーム・ダマンド
ボールにバターと砂糖を入れ、ホイッパーで混ぜる。アーモンドパウダーを入れ、卵を1個ずつ入れて混ぜる。コーンスターチ、ラム酒、バニラエッセンス、余ったクレーム・パティシエールを加え、フードプロセッサーで混ぜる。

研修はアトリエ形式で、簡単な説明の後、シェフが実演し、その後、基本的には2人一組で実習を行う。泡立てやクリーム作りには機械を使い、温度は温度計で計るという、感覚より、数字に頼った菓子作りである。工程がよく考えられていて、生地を休ませている間に、次はこれ、次はこれとどんどんこなしていかなくてはいけない。材料は計っておいてくれて、洗い物もしてもらい、真ん中の楽しい所だけやる感じ。その場でシェフの作品を、コーヒーと共に試食。いたれりつくせりの研修だ。最初の完成品、パリ・ブレストは生地はぱりぱり、クリームは濃厚でおいしかった。緊張の研修初日を終え、昼食ははリッツの職員用のカフェ。さすがホテル、社食なんかより全然充実している。盛りもすごい。ワインもチーズもデザートも種類豊富。食券を見せると食べ放題。この日は豚肉とマッシュポテトをどっさり。ちょっとでいいって言ってるのに。

Paris Brest

ホテルに戻り、全員で町へ出る。とにかく寒くて耐えられそうにないので、近くの観光客相手のような店で、防寒具探し。とりあえず、黒いストールを買う。予想外の出費だ。メトロの1週間用の定期、カルト・オランジュは私達の研修中に先生が買っておいてくれた。まずはメトロで東駅へ。10区のパラディ通りの辺りで、バカラ美術館とその近くの食器屋をまわる。バカラ美術館では、スカートがシャンデリアのようなガラスの人形がお出迎え。中に入ると、グラスやら花瓶やらがずらりと並ぶ販売のコーナーと、その奥にアンティークの香水瓶やランプシェード等が飾られた展示のコーナーに分かれている。いくつもあるシャンデリアも見事。販売といってもテーブルコーディネートされていたり、ゆったりと配置されているので、見ているだけでも飽きない。次に見たのはLA TISANIEREというリモージュ焼きのお店。ここで、白い食器と小鳥の形のレモン絞りを買うが、後に紛失してしまう。多分荷造りの時、部屋のどこかに置いてきてしまったのだろう。

その後、「モデュイ:MAUDUIT」へ。商店街の中のモダンな店構え。1つしかなかったモンモランシーを道端で6人で分け合う。なんと先生は“とらや”かどこかの水ようかんのスプーンを持っていたのだ。以後マイ・スプーン持参は旅の常識となる。でも1/6じゃあ、味はいまいちわからないよ。それから、余り時間はなかったが、メトロに乗り、マリアージュ・フレールへ。ずっと立っていてかなり疲れていたので、即お茶したかったが、席が空いていない。買い物する気力もないので、おとなしく待って、先生お薦めのアールグレー・インペリアル(earl grey imperial)を飲む。さすがに誰もケーキを食べようとはしなかった。一息ついて、ユダヤ人街のケーキ屋の前を通り、惣菜屋「ジョー・ゴールデンベルグ:JO GOLDENBERG」へ。独特の匂いと雰囲気。ウォッカや魚のオイル漬け等が並んでいる。そして、ポンピドーセンターの脇を通って、辻静雄先生一押しの「ビストロ・ブノワ:Benoit」へ。豪華に花が活けられ、高級感溢れる店内。お客さんもちょっぴりおめかしした、落ち着いたカップルや、葉巻の似合うおじさま。ちょっと浮いた感じの我々は、前菜を6種類とり、6人でまわして取り分ける。周りの目が気になるが、観光客だから許してね。オーダーは

○フォアグラのテリーヌ 
○牛肉のサラダ 
○オマールとアーティチョーク 
○鴨とフォアグラ
○エイのゼリー寄せ
○スモークサーモン
いかにも昔ながらのフランス料理だ。メインは鶏と牛肉と鱸の3品。前菜だけですでにお腹は一杯なので、これで精一杯だ。でもデザートはしっかり食べる。真っ赤な椅子にクラシカルな装飾。優雅なディナーだった。