フランス地方菓子紀行(1)東部編


1996年8月25日(日)<ストラスブール>

昨夜のどたばたがなかったかのように、新たな1日が始まる。まずは町の中心、ストラスブール大聖堂(Cathedrale)へ向かう。途中Place du Marche aux Cochon de Laitという小さな石畳の広場があって、乳のみ豚の市場という意味を知ると、なんだが血生臭い気がしてくる。今では花が飾られて、面影はないのだが。その先、両側にパラソルの花を咲かせたカフェやレストランが並ぶ小道を進んでいくと、煤けたローズ色の重々しい建物が視界に飛び込んでくる。壁面には数え切れない程の彫刻が落ちそうな位くっつき、尖塔がすくっと1本伸びている。12〜15世紀に建てられたゴシックの教会、と聞くと2本の塔のシンメトリーな美しさを持つ大聖堂を思い浮かべがちだが、ここはちょっと趣が違う。しかもこの尖塔の高さは142mでフランス1。赤いのは、付近のヴォージュ山地から切り出した赤色砂岩で造られたため。前の広場には紙芝居のおじさんが客を集め、偶然民族衣装を着たパレードの人々が通りかかる。周りには土産物屋が並び、どの店にも大小様々なクグロフKouglof(アルザスで一番有名な発酵生地で作ったお菓子。特産の陶器の型で焼かれるの型が置かれている。カテドラルの裏手にはステンドグラスの美術館(Musee de l'Oeuvre Notre-Dame)があり、まずは見学。20FF。現存する最古のものといわれるキリストの顔のステンドグラスが展示されている。

見学を終え、お目当てのケーキ屋さんに向かうが、「Naegel:ネゲル」も「Kohler Rehm」も閉まっている。商店街のあたりはしんとしている。日曜日だからね〜。「Kirn:キルン」でシュークルートの真空パック買おうと楽しみにしていたのに・・。追い打ちをかけるように雨までぱらついてくる。急いで先程の広場に戻り、黄色のパラソルがかわいい「Patachou」というケーキ屋さんに駆け込む。ガラス窓からホールのケーキが並んでいるのが見える。ドイツに近いだけあって、チーズケーキもある。他にブリオッシュの間にクリームのはさまったケーキや、スポンジの上にメレンゲとアーモンドスライスののったケーキ、リンゴのタルトを食べる。32FF。その後、雨もあがったのでホットドック(18FF)の立ち食い、いや、歩き食い。

そして観光&買い物タイム。まずは行列に並んでカテドラルの鐘楼に登る。エレベーターが昼休み(?)で、不安になりながらしばし待つ。上りのみで13FF。屋上は結構な眺め。赤茶色の三角屋根の街並みの向こうに、ヴォージュ山地や黒い森まで見渡せる。下りは階段。よろよろしながら下りてくる。そして気合を入れて買い物。通りに並んで競い合うお土産物屋さんは、それぞれの手書き模様の陶器の品揃え。クグロフ型はもちろん、お皿やカップが山と積まれている。まず、どのお店で買うかを迷い、さらに1つ1つ手にとって比べる。地の色、絵柄と組み合わせが多過ぎて迷い出すときりがない。さんざん考えた末、結局青地にピンクと緑の模様の入った最もオーソドックスと思える小さなクグロフ型1つ(32FF)購入。重さと割れてしまうリスクを思うと、「ケーキは焼かないかもしれないし」という気持ちが勝り、思い出だけ持ち帰ることにする。目をつけていた布製品のお店は閉まったまま。プチ・クグロフ(10FF)を買って、タイム・アップ。

全員集合し、見ればほぼ全員クグロフの入った袋を持ち、イル川沿いの道を歩いていくと、プティット・フランス(La Petite France)という地帯に行き着く。色とりどりの壁と黒い木組みの家々。川に面したレストランには赤やピンクの花が飾られている。時折観光客を乗せたボートが通る。小フランスというけれど、どうみてもドイツ。グリム童話の主人公が出てきそうな雰囲気だ。大きな水門の所まで歩いて、引き返す。川沿いのカフェのテラスでビールを飲みながら、大パノラマを楽しむ。時間を忘れて気ままな旅人になる。

一旦ホテルに戻り、おめかししてバスで3ツ星レストラン「Buerehiesel:ビュールイーゼル」へ。バスを降りて、動物園の臭いのする公園を歩いていく。☆☆☆初体験!蔦のからまる一軒家で、軽井沢のハイソなイメージ。ベージュの壁に黒い木組み、軒先にドイツ風のあひるの看板が下がっている。全員で集合写真を撮ってから、2階の個室に案内される。

<この日のメニュー>
○小さな牡蠣のクリームスープ
○トーストしたフランスパンの上に鴨のフォアグラのグリル、ロケットとアーティチョークのサラダ
○ひめじの蒸し煮、トマト、オリーブ風味
   
かえるのポワレ(フライパンで焼く)、セルフィーユ風味、茹でたラビオリ、クリームソース和え
平目のポワレ、ジロールのソテー、バターソース
鴨のロティ(オーブンで焼く)、生姜とヘーゼルナッツとパセリのソース、人参、さやいんげん添え
   
○桃のフォンダン、桃のポワレ、くまつづらのアイス
 

白: Tokay Pinot Gris, Reserve (Vin d'Alsace, Preiss-Zimmer) 1994
赤: Chorey-Les-Beaune, Tollot-Beaut & Fils 1990

最初はとってもおいしく頂いていた。特にアミューズ・ブッシュなんて、まろやかで上品なお味。さすが3ツ星なんて思いながら。でも途中でお腹が一杯になり、それから後はほとんど拷問、ワインで流し込む状態。もったいないことだ。もちろんデザートまでしっかり食べたけど。残す勇気も必要ですかね。850FFの贅沢。