フランス地方菓子紀行(1)東部編

1996年8月28日(水)<パリ>

シャンパーニュ、ロレーヌ、アルザス、ブルゴーニュとフランス北東部をまわった旅も終わりに近づき、ディジョンからバスで一路パリへ。ホテルに着く前に7区にあるチョコレート屋さん「Jean-Paul Hevin:ジャン・ポール・エヴァン」に、バスで乗り付ける。前の年に6区の支店の方に行ったことがあったので、エヴァンさんとは2度めの対面。お目当てのタルト・タタンは1つしかなく、誰か買ったらちょっと食べさせてね状態。なのでチョコレートのケーキを買うことに。マカロン・オ・ショコラMacaron au Chocolat(マカロン生地の間にガナッシュ)とサフィSafi(オレンジの香りのチョコムースとビスキュイ)。2つで36FF。壁にはびっしり自家製ジャムの瓶が並んでいて圧巻。でも私はアクセサリーショップのようなディスプレーの支店の方が好きだ。狭いお店にひしめき合って買い物し、写真を撮らせてもらい、バスにてホテルへ。途中極めて古そうなレストランがある。聞けば、その昔貴族の女性が、男性から貰ったダイヤの真偽を試そうと、窓ガラスをひっかいたため、ガラスには無数の傷があるという。いつの時代にも女性を騙す奴がいたようだ。しかし、女の方もしたたかだ。

さて、ホテル。場所はリヴォリ通りに面した一等地。だが工事中で埃っぽい。入った瞬間は一流ホテルなのだが、奥へ進むと工事現場。ロビーも狭い。部屋は暗くて古めかしい。この時は到着が午前中だったので、部屋には入れず、荷物を預けて交代でトイレに行き、その後の計画を立てる。荷物ったって、ワインやらクグロフ型やら割れ物が多く、預けるのも心配。割れ物だからね、と何度も念を押すが、わかってくれたのだか。ケーキはどうしようということになって、ええい食べちゃえっと、ホテルのロビーで立ち食い!一口食べたタルト・タタンのおいしかったこと。ぜひ次はまるまる1切れ食べたいものだ。チョコレートケーキは、彼のチョコレートへの愛情が伝わってくるこだわりの一品。

さてこの日は買い物デーということになって、両替をして各々町へ繰り出す。といっても、行き先は似たようなもの。我々のパリ巡りは、何をおいてもまずマカロン、ということで歩いて「Laduree:ラデュレ」に。緑をベースにした店構えはとてもおしゃれ。中には色とりどりのマカロンがころころ並んでいる。「作るの難しいんだよ」とはM嬢の弁。日本は湿気が多いから、すぐしなっとしてしまうし。マカロンの大きさは大小2種類。種類は10種類以上。大は1つ16FF、小はグラム売り。箱の大きさを選んで、詰め合わせて貰う。私は頼まれていたので、お土産用に1箱。12個位入って42.5FF。あと、かりっと香ばしそうなクロワッサン(6.5FF)を1つ。たまらずその場で食べてしまったけど、これが私のクロワッサン・ベスト3に入るほどおいしい。かわいいイラストのポストカードも何種類かあって、まるで観光名所。でも、買ってしまう。1枚5FFが6枚だと26FFなので、2人で3枚づつ。

それから、マドレーヌ広場に向かい、「Hediard:エディアール」で飽きずにマスタードを買い(18FF)、店内をぐるっと見て、「Fauchon:フォション」の地下のカフェに。サヴァラン、いちじくのタルト、サブレの間にクリームが挟んであるものを食べる。22FF。甘いものはあくまでも甘く、これがパリの味だ。一息ついたところで、日本人を小馬鹿にしているような店員さんのいるコーナーは避けて、隣の生鮮食品の建物へ。ここで、バール・ル・デュックで買い損なった、フレッシュの白グロゼイユ発見。即、購入。1パック12FF。他に、有名なアジャンの干しプルーンを8.5FF分買う。赤ワインで煮たいところだが、そのままでもおいしくて、半分位食べてしまった。グロゼイユの方はその場でちょっとつまむが、種があって食べにくく、あまり進まない。その後ホテルに置いておいたら、2日目にカビが生えてしまった。

そして、やはりナンシーで買い損なった「Baccarat:バカラ」へ。M嬢と色違いで、日本から目をつけていた花のペンダント(760FF)を母へのお土産という名目で買う。そして、いつも必ず行ってしまう「Agatha:アガタ」へ。旅の間中欲しかったサングラスがやっと買える。銀色のケースにトレードマークのテリアがついていて、かわいい。それから、やはり外せない「Fondeur Chiba:フォンドゥール・チバ」のフランス版レーズンサンド、ヴィニョンVignon(15FF)と、M嬢は袋詰めされた小さいレーズンサンドを買い、「Printemps:プランタン」ヘ。昨年は鍋とか買っかっちゃったのよね。今年は普通に、スカーフやら、化粧品を。

ホテルに戻り、二手に分かれて、一方はF氏率いるモンマルトル観光とクレープツアー(F氏提案の中華は却下)、もう一方は先生も一緒の、食べ足りないのでフランス料理ツアー(私はこちら、総勢たったの4人)。先生が見つけてくれた1ツ星のトレンディーなレストラン「La Table D'Anvers:ラ・ターブル・ダンベール」。9区にあり、イタリア系のConticini兄弟がやっている店。その後日本の雑誌にも登場していた。

<前菜>
○サーモンのタルタル、マスタードとアンチョビーのソース
○エジプト豆のペースト、胡麻、ポワローのせ(酸っぱい)
   
<メイン>
○マグロ(中は生)、玉葱、トマト、空豆、パクチの酸味のあるソース煮
○豚の頬肉の赤ワインソース、ベーコン入り
  
<デザート>
○スペシャリテのチョコレートのコロッケ
○バニラアイス、パン・デピス、パイナップル、上に塩 
 

といった感じで最初は遠慮がちに、次第に大胆に4人で交換しながら食べる。お店の人は見て見ない振りというか、びっくりして何も言えないというか。“まわるテーブルがあればいいのにね”という名言が飛び出す。料理はどれも一工夫されていて、酸味がかっていたり、香辛料がうまく使われていたりして、地方で伝統的な料理を食べてきた我々にはとても新鮮。これなら他の方も食べられたかもね、という感じ。量もで〜んではなくて、程良い。デザートは更にオリジナリティー溢れている。日本でもアイスクリームの天ぷらなんて一時はやったけど、こちらはチョコのフライ。まんまるのコロッケが月見団子のように山となって出てくる。中はあつあつでとろっと溶け出し、悪くない。アイスに塩をかけたり、胡椒を添えたりと、充分驚かせて貰った。これで380FFとは、絶対お薦め。